まえがき 千曲川から河童を追い出したのは、誰だ 田中 欣一
序 章
千曲川に寄せる思い 「ふるさと千曲川」に寄せることば
いで はく(作詞家) 井出 文蔵(きりえ作家) 井出 孫六(作家) 猪瀬 直樹(作家) 倉島 重友(画家) 小宮山 量平(作家) 吉岡 忍(作家)
第1章
川の思想 水の持つ力 田中 欣一(民俗・日本思想史家)
唱歌「故郷」でうたわれている「かの山」「かの川」は、日本の里山の原風景。県歌に「北に犀川 千曲川、南に木曽川 天竜川」とあるように、信州は<源流の国>でもある。あらゆる角度から「水文化」をさぐる。
第2章
千曲川の風土と河川文化 市川 健夫(東京学芸大学名誉教授)
縄文時代から人が定着。『万葉集』で「知具麻河」と記されて以来、「千隈川」「筑摩川」「筑摩河」と転変。沿岸には五つの盆地があり、豊かな産業を生み出した。
第3章
千曲川の民話伝説 高橋 忠治(児童文学者・詩人)
千曲川の民話伝説の中から、十余編を紹介。「小泉小太郎伝説」や海を求めて小海までのぼってきた「夫婦クジラの話」などなど……。
第4章
千曲川流域における遺跡と水神信仰 宮下 健司(長野県立歴史館総合情報課長)
千曲川の流域に点在する遺跡から、古代人の信仰の姿を見る。
第5章
千曲川の絵図を読む 滝澤 公男(千曲市文化財審議委員)
千曲川は数年に一度大洪水をおこし、そのたびに川筋が大きく変る。村絵図に見る災害史。
第6章
千曲川の大洪水 黒岩 範臣(元信濃毎日新聞編集委員)
千曲川の大洪水は「戊の満水」(死者2800名)を筆頭に、数知れない。当時の文書や証言から、その実態にせまる。城主が舟で避難した松代城。屋根に乗って小布施まで流された長野市の人びと……。
第7章
千曲川の橋・渡し舟と通舟 古川 貞雄(元長野市誌編纂主任)
千曲川は最上流では橋が架けられ、佐久平より下流は渡し舟。商売で物を運ぶのは通船。さまざまな舟運の話。
第8章
千曲川をめぐる中世戦乱史 村石 正行(長野県立歴史館専門主事学芸員)
千曲川沿岸の合戦史。佐久、小諸、上田、長野、中野、飯山等々での合戦を詳しくつづる。「川中島合戦」での信濃武士の活躍も詳述。
第9章
千曲川の文学 東 栄蔵(文芸評論家)
島崎藤村の『破戒』をつぶさに読み解く。明治時代の千曲川沿岸の人びとの暮らしや考え方などに迫る。
第10章
千曲川の自然と野鳥 中村 浩志(信州大学教育学部教授)
千曲川の自然環境のなかで生きる鳥たちを紹介。水辺の鳥、季節の鳥、渡りの鳥など。
第11章
千曲川の魚たち 長田 健(長野県水辺環境保全研究会事務局長)
千曲川に生息する魚を、上流、中流、下流と紹介。近年は移入魚や帰化魚などが問題。また、キンギョやニシキゴイなどのペットの放流も多く、いまや在来魚は、全体の37%だという。
第12章
千曲川中流域の漁労 浅野井 坦(長野県文化財保護指導委員)
千曲川では専業魚家はわずかではあるが、その漁法は多彩。投網、仕掛け、カジカ採り、投げ針、やな漁など、克明に披露。
第13章
水への祈り 滝澤 公男(千曲市文化財審議委員)
千曲川流域には上流から下流まで、多くの祠がある。いずれも水神で、村の安全を祈願して建てられたもの。水の恵みと畏れについて語る。
第14章 「信濃川・千曲川遡行の旅」から 田中 欣一
河口への憧憬・源流への思慕
あとがき
千曲川、長大な叙事詩を歩く 田中 欣一
A4判/上製/272頁