鮮烈で純粋な生涯のうちに賢治が創作した800余篇の詩から、「雨ニモマケズ」など、広く人々に愛されている作品、平明で親しみやすい作品を中心に、100点の詩を精選。岩手の地に根ざした、人や自然への愛をつづった作品を集めた詩集。
宮澤賢治は、独特の静謐感のある、幻想的な作風の童話や詩を多数遺し、その作品は、獣たちや草木、風や星といった、動植物や気象・天文との交感を生き生きと描いた点に特徴がある。それは、彼をとりまく故郷岩手の大自然とのふれあいから生み出されたものである。 加えて、賢治が傾倒していた仏教思想の影響も見られ、利他や自己犠牲の精神が主題として描かれることもある。
また賢治は、貧困にあえぐ農民たちの姿に心をいため、地元の農民の生活を向上させるべく、生涯献身的に尽くしていたことでも知られている。自然、宗教、貧困――賢治の作品に描かれるテーマは、現代日本に生きる我々にとって非常に示唆に富んでいる。
現在、東日本大震災を契機として、東北地方を中心に、宮沢賢治の作品を再評価する動きが活発である。「雨ニモマケズ」をはじめとする賢治の作品が、東北の人々に、深い感動と希望を与えたのであろう。それは、岩手に生きた賢治の、弱い人々、傷つき苦しむ人々に対する、優しい思いやりの心がなせる業なのかもしれない。
【収録作品】
◆ 雨ニモマケズ ◆ 永訣の朝 ◆ グランド
◆ 東岩手火山 ◆ 春と修羅 ◆ 電柱
◆ オホーツク挽歌 ◆ 風景とオルゴール 他
宮澤賢治略年表付き
【宮澤賢治 プロフィール】
明治29年(1896)、岩手県稗貫郡里川口村(現花巻市)生まれ。
盛岡高等農林学校在学中に同人誌を創刊。農学校の教師などをしながら、童話と詩を創作。代表作は、童話「注文の多い料理店」「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」、詩集『春と修羅』。
また、農民のための文化教育や農業指導に邁進。大正15年(1926)に私塾羅須地人協会を設立するなど、献身的に活動した。
昭和3年に病臥。昭和8年(1933)9月21日死去。享年37歳。