【推薦のことば】
歴史作家 津本 陽氏 絶賛!
鋭敏な考察力と独自の筆技を身に纏う新たな歴史小説の開拓者が登場した――
太田道灌、上杉定正、足利茶々丸、大森氏頼、今川氏親、三浦道寸という名だたる戦国武将と北条早雲のかかわりを描いた新鋭の野心作。
従来の歴史小説では見られなかった、歴史上の解釈をストーリー上に巧みに盛り込み、あきさせない絶妙の手腕は歴史小説新時代の黎明を告げるものとなるだろう。
【著者について】
1960年、神奈川県横浜市生まれ。
早稲田大学卒業。
日本IBMに十余年勤務後、外資系日本企業の事業責任者を歴任。
2006年にクエーサー・マネージメントを設立し、独自の視点と手法による企業支援サービスを展開中。
2012年には、『城を噛ませた男』(光文社)が146回直木賞候補となる。
主著に『戦国関東血風録~北条氏照 修羅往道~』(叢文社)、『虚けの舞―織田信雄と北条氏規』(彩流社)、『武田家滅亡』『山河果てるとも』(角川書店)、『北条氏照―秀吉に挑んだ義将』(PHP文庫)がある。
【作者の一言】
この作品に対する思い入れは、たいへん深いものがあります。
初めての短編チャレンジでもありましたが、それぞれの話に工夫を凝らしながら、必然性のあるものにしていく作業は楽しくもあり、辛くもあるものでした。
最も苦労したのが、短編という枠組みの中で、戦国黎明期の複雑な政治状況をいかに描くかでした。
この背景描写をおろそかにすることは容易でしたが(その方が、作品の評価は高まったでしょう)、私は読者にそれを知ってほしかった。
それを知らないと、伊勢宗瑞と六人の男たちが、この時代(戦国黎明期)、この場所(関東)でしようとしていたことが理解できないからです。
歴史小説ファンは、ただ「小説は面白ければいい」と思っている方は少ないでしょう。
ハリウッドの娯楽映画のように、時間潰しの代わりに小説を読む方は少なく、そこから「何か感じる、何か得る」ことが大切だと思っている方が多いと信じています。
そうした方々にとって、ストーリーを楽しみつつも、時代背景という基調低音が鳴り続ける必要があると信じて書きました。
調査もいい加減な上、歴史に対する愛情も洞察力もない軽佻浮薄な歴史/時代小説が主流を占める現在、その流れに棹差す意味でも、絶対に世に出したかった一作です。
「こころして」お読み下さい。
A5判変形/426頁/並製