「2016年度全日本博物館学会学会賞」を受賞しました!
次の媒体で紹介されました!
「茶華道ニュース」 2015年7月1日号
「美術の窓」 2015年12月号
「文化経済学」 第13巻第1号
野呂田純一 著
本書は、西洋の美術に関わることば・概念、美術に関わる制度、美術思想や美意識が万博への参加を通じて国内に流入してくるにあたり、政府が各時期の政策目的を達成するため、幕末まで存在し維新によって廃絶した〈美術的なるもの〉をどのように再編成してきたかを捉えようとしたものである。
建議書、起案書、講演集などに見られる美術官僚たちの言説に注目しながら、幕府博覧会掛、外務省、工部省、内務省、大蔵省、文部省、農商務省、宮内省における「美術」概念や「美術」政策の変遷を辿ることによって、美術における「政治性」を明らかにしていく。
【目次】
序章 日本近代美術史研究と本書の研究視角
「日本近代美術史」の位相
本書の研究視覚と各章の構成
第1章 幕府博覧会掛における「美術」概念の把握
渡辺崋山による「西洋芸術」の理解
蕃書調所頭取古賀謹一郎における「芸術」概念と「技芸」
幕府博覧会掛による芸術諸概念の把握──パリ万博(1867年)
第2章 明治初期外務省における「美術」概念の把握──万博関係文書の翻訳を通じて
英国国際博覧会(1871~1874年)
ウィーン万国博覧会(1873年)
第一回内国勧業博覧会(1877年)における「美術」
第3章 美意識の交流──ウィーン万博における「よき趣味」と「風雅」
江戸期から明治初期にかけての美意識の位相
西洋の「よき趣味」と日本の「風雅」との出会い
第4章 明治初期博物館における「古物」と「道具」の継承
大学・文部省における古器物保護・収集政策
華族宝物調査と壬申検査
第5章 明治初期の「勧工」政策と「装飾術」
目賀田帯刀の「百工館」構想
工部省勧工寮における「勧工」と正院博覧会事務局
正院博覧会事務局「工業科」の勧工
第6章 内務省における「美術」行政と博覧会──フィラデルフィア万博・第一回内国勧業博覧会・パリ万博
勧業寮と博物館の関係性
「ワグネル報告書」の制度化
勧商局による直輸出振興政策の形成
第一回内国勧業博覧会の〈美術館〉
第7章 大蔵省における〈帝室技芸員構想〉の建議と草創期龍池会
大隈重信「三議一件」と矢野文雄「学芸寮」設置の建議
河瀬秀治「美術工芸ノ保護ニ関スル意見書」
佐野常民の「美術」思想と龍池会の性格形成
「巴里府日本美術縦覧会」
第8章 農商務省における「美術」政策
内務省博物局による第一回観古美術会と山高信離
第二回以降の観古美術会における龍池会と農商務省博物局の関係性
絵画共進会と〈帝室技芸員構想〉
「第三回絵画共進会」と東洋絵画会
第9章 宮内省における「美術」政策の制度化
帝室技芸員制度の成立と日本美術協会
帝国博物館構想と九鬼隆一
「時代品展覧会」──〈日本美術史〉の展示
「国宝」概念の形成過程
終章
あとがき
参考文献
注
索引
【著者紹介】
野呂田純一(のろたじゅんいち)
1972年秋田県生まれ。大阪大学経済学部卒業。
1998年に(財)神奈川県国際交流協会に入職(現(公財)かながわ国際交流財団)。現在、企画調整課課長補佐。
2009~2014年、文教大学国際学部非常勤講師(科目「文化施設マネジメント」等)。
2013年に総合研究大学院大学(国際日本研究専攻)にて博士号取得(学術博士)。
所属学会:明治美術学会、全日本博物館学会、ジャポニスム学会、日本文化政策学会。