『大正名器鑑』は、高橋義雄(箒庵)が編纂した不朽の名著。大正時代に刊行された初版は発行部数の僅少さと判型の巨大さ(B4判)から普及せず、昭和12年の普及版、平成9年のアテネ書房版も判型は変わらず、文章も初版の擬古文のままで、限られたコレクターズアイテムであった。全文を現代語に訳し判型を小型化し携行可能にした、唐物茶入編に続く第2弾。
井戸茶碗はかつて朝鮮半島でつくられ、十六世紀初めより茶の湯(茶道)で珍重され、茶碗の中でも〝最高峰?とされる。大振りで堂々としたたたずまいの井戸茶碗は、侘び茶の隆盛とともに 茶人の間で高く評価され、井戸茶碗 銘「天下一」が豊臣秀吉の茶会で使用されるなど、戦国武将にとって自らの威信を示す憧れの道具でもあった。今回は高橋義雄(箒庵)の 『大正名器鑑』より「井戸茶碗」 75 点を全収録、原本の写真とともに、読みやすい現代語訳のハンディな一冊とした。
《主な内容》
豊臣秀吉、徳川家康、筒井順慶、松永久秀、柴田勝家、福島正則、織田有楽、古田織部、細川忠興(三斎)、小堀遠州、前田利常、津田宗及、千利休、山上宗二、本阿弥光悦らの戦国武将や茶人らが所有した茶碗の数々を収録。
《主な目次》
井戸の部
一、名物手
喜左衛門井戸 一名本多井戸(京都孤篷庵蔵)
加賀井戸 一名獅子(伯爵松平直亮氏蔵)
筒井筒(京都毘沙門堂蔵)
宗及井戸(東京根津嘉一郎氏蔵)
有楽井戸(大阪藤田彦三郎氏蔵)
浅野井戸(侯爵浅野長勲氏蔵)
細川井戸(伯爵松平直亮氏蔵)
越後井戸(男爵岩崎小彌太氏蔵)
松永井戸(男爵鴻池善右衛門氏蔵)
福島井戸(侯爵前田利為氏蔵)
坂部井戸 一名高圓井戸(伯爵酒井忠道氏蔵)
美濃井戸(東京団琢磨氏蔵)
翁 (男爵益田孝氏 蔵)
坂本井戸 一名常盤井戸(男爵鴻池善右衛門氏蔵)
金地院井戸(男爵岩崎小彌太氏蔵)
老僧井戸(伯爵藤堂高紹氏蔵)
紀井戸(男爵三井高保氏蔵)
堀井戸(伯爵酒井忠正氏蔵)
立華井戸(東京三井元之助氏蔵)
龍光院井戸(京都龍光院蔵)
九重井戸(男爵鴻池善右衛門氏蔵)
九重井戸(伯爵松浦厚氏蔵)
本阿弥井戸 銘「玉川」(伯爵酒井忠正氏蔵)
大高麗 一名荒木高麗(侯爵徳川義親氏蔵)
大井戸(大阪村山龍平氏蔵)
大井戸 呼名しころ(大阪木村権右衛門氏蔵)
二、古井戸
老僧井戸(男爵藤田平大郎氏蔵)
六地蔵(男爵住友吉右衛門氏蔵)
忘 わすれみず 水(東京根津嘉一郎氏蔵)
小塩井戸(伯爵松平直亮氏蔵)
上林井戸(男爵三井太郎右衛門氏蔵)
小笠原井戸(公爵徳川家達氏蔵)
栄仁井戸(名古屋二村源之助氏蔵)
江岑井戸(大阪島徳蔵氏蔵)
若菜井戸(男爵益田孝氏蔵)
宇治井戸 一名蜂谷井戸(名古屋中村貫之助氏蔵)
金沢井戸 一名 加賀井戸(東京馬越恭平氏蔵)
水戸井戸(男爵鴻池善右衛門氏蔵)
利休井戸(公爵徳川家達氏蔵)
利休小井戸(京都千宗左氏蔵)
須弥 一名十文字井戸(男爵三井高保氏蔵)
柏木井戸(京都田近岩彦氏蔵)
小浜井戸 略称浜井戸 (男爵森岡彦氏蔵)
三、小貫入
雄蔵山 小井戸(男爵藤田平太郎氏蔵)
小貫入 小井戸(男爵益田孝氏蔵)
小井戸(東京加藤正義氏蔵)
小鷹 井戸脇(東京浅田正雄氏蔵)
四、青井戸
宝樹庵(金沢松岡忠良氏蔵)
八文字 屋 井 戸 (男爵鴻池善右衛門氏蔵)
蓬莱(大阪 山口吉郎兵衛氏蔵)
こたま(大阪 阪上新治郎 蔵)
竹屋 一名何陋(東京加藤正義氏蔵)
升屋井戸(男爵三井高保氏蔵)
柴田井戸(男爵藤田平太郎氏蔵)
隼 (男爵益田孝氏蔵)
初霞(大阪磯野良吉氏蔵)
雲 (大阪藤田徳次郎氏蔵)
蓬壺(大阪藤田彦三郎氏蔵)
春日野(男爵益田孝氏蔵)
松本井戸(男爵近藤滋弥氏蔵)
沢潟(東京馬越恭平氏蔵)
四もと(金沢松岡忠良氏蔵)
義村井戸(京都服部七兵衛氏蔵)
久田井戸(名古屋森本善七氏蔵)
藤屋井戸(金沢横山章氏蔵)
鳴戸(東京根津嘉一郎氏蔵)
秋野(出雲田部長右衛門氏蔵)
田中井戸(東京田中四郎左衛門氏蔵)
凉及井戸(東京中山佐市氏蔵)
古今井戸(金沢岡伊作氏蔵)
金鳳(東京馬越恭平氏蔵)
五、井戸脇
長崎(大阪平瀬三七雄氏蔵)
井戸脇 (東京加藤正義氏蔵)
井戸脇(京都籔内紹智氏蔵)
鳥羽屋(東京高橋義雄蔵)
度量衡換算表
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索引
A5判・278頁 上製