利休が秀吉と出会ったのは、還暦を過ぎ、老境を迎えた頃であった。茶の湯を通して交流は深まり、二人は一挙に親交を深めていく。その蜜月は八年ほどの短期間であり、最後は、利休の自害をもって終焉を迎える。なぜ秀吉と利休は破局に至ったのか、その謎にはさまざまな説が唱えられ、いまも多く人々が関心を寄せるテーマとなっている。
本書は、長らく茶道書の研究分野で活躍してきた筆者が、初めてノンフィクションという手法を借りて、秀吉と利休の間に繰り広げられたドラマを描こうとした作品である。事実の積み重ねだけでは描き切れない二人の心情に深く迫り、事実の裏に潜む必然性を探ろうとしたろうとした意欲的な試みと言えるだろう。
《目次》
第一章 利休と紹鴎の出会い
第二章 師匠紹鴎から離れる利休
第三章 利休、信長の茶堂となるか?
第四章 茶の湯の革新に目覚める利休
第五章 利休の提案を理解する秀吉
第六章 利休、創作活動を開始する
第七章 津田宗及と利休を平等に扱う秀吉
第八章 秀吉茶の湯の真骨頂
第九章 秀吉と利休、茶の湯の位相
第十章 コンセプトの利休とファッションの秀吉
第十一章 破局への道
著者プロフィール
1943年神奈川県生まれ。東北大学文学部美術史科修了。東京国立博物館工芸課長、郡山市立美術館館長、人間国宝美術館館長などを歴任。蒼庵主人。陶磁器・茶道史研究家。
おもな著書に『千利休の創意 冷・凍・寂・枯からの飛躍』(角川書店 1995)、『茶人豊臣秀吉』(角川書店 2002)、『武将茶人 上田宗箇』(角川学芸出版 2006)、『エピソードで綴る名物物語』(宮帯出版社 2016)、『魅惑の桃山茶の湯』(宮帯出版社 2019)。編著に『角川日本陶磁大辞典』(角川学芸出版 2011)などがある。
四六判・280頁・並製